姫路獨協大学が徳洲会に経営権譲渡

徳洲会の狙いと勝算はどこにあるか
初台さん@大学財務ウォッチャー 2026.09.27
誰でも

2026年9月25日、姫路獨協大学が学校法人徳洲会と設置者変更契約を締結したことを発表しました。設置者変更の手続きは、2028年4月1日の設置者変更に合わせて行う予定です。

姫路獨協大学は1987年に全国初の「公私協力方式」で開学した大学ですが、長年定員割れに苦しんでいます。
2020年度時点で入学定員充足率は7割台でしたが、直近の2026年度は3割台にまで落ちています。入学者数はわずか100人程度となり、特に薬学部の定員割れが激しく、2024年度は60人の入学定員に対して19人が入学。薬学部は2025年度に学生募集停止を行っています。

姫路獨協大学「法律第7条第1項の確認に係る申請書」より筆者作成

姫路獨協大学「法律第7条第1項の確認に係る申請書」より筆者作成

この大学を設置する獨協学園は公立化に向けて動いていましたが、2022年に姫路市より公立化は困難であると断られています。その後も大学譲渡に向けての活動をしていましたが、譲渡の交渉の過程で役員による現金の受け取りや会食接待が発覚。
そんな混乱の中での学校法人徳洲会による設置者変更は、獨協学園にとっては救いの手だったでしょう。なぜなら、学生募集停止と譲渡では、経営的なダメージが大きく違うからです。

まずは、姫路獨協大学を設置している獨協学園の収支を見ていきましょう。

「獨協学園の事業報告及び財務情報」より筆者作成

「獨協学園の事業報告及び財務情報」より筆者作成

収支は年々悪化しています。2022年までは高い利益額だったものの、2024年には赤字転落。2025年は何とか黒字転換しています。
獨協学園は、姫路獨協大学の他に医科大学や中高を設置しています。

獨協学園「事業報告書」より

獨協学園「事業報告書」より

2025年度時点の学園の総学生生徒数は14,114人。うち、姫路獨協大学は819人しか在籍していません。加えて、獨協医科大学は医学部を設置しており医療費収入があるため、収支はこれに大きく依存しています。
つまり、1万人規模の学園における800人程度の大学の収支なんて、学園全体に及ぼす影響は僅か、というのが一般的な見方です。

とはいえ、先ほど見た通り姫路獨協大学は充足率3割台と、異常な定員割れを起こしています。加えて学園の直近の収支も3億円の黒字と、ギリギリ黒字を保てているものの、低調です。

仮に姫路獨協大学の学納金収入がざっと12億円程度、その他補助金等を加えて15億円程度の教育活動収入としましょう。
赤字率が▲30%であった場合、赤字額は4.5億円、赤字率が▲50%の場合は7.5億円にまで膨れ上がります。▲30%の赤字率の大学なんてなかなかないですが、この充足率なら十分あり得ます。

つまり、ギリギリ黒字を出せている獨協学園にとって、大きく定員割れしており、赤字額が多いと推定される姫路獨協大学を、何としてでも切り離したい意図があったことがわかります。
学生募集停止をしたとしても、学生が卒業するまで、つまり最短でも4年間は大きな赤字を覚悟しないといけないため、できれば譲渡という形で明け渡すことが望ましいと考えられます(その後の跡地の問題もあるため)。

この大学を譲り受ける学校法人徳洲会は、湘南鎌倉医療大学を設置する学校法人です。言うまでもなく、徳洲会グループの学校法人です。同大学は看護学部のみを設置する入学定員100人程度の小規模校ですが、定員は充足しています。また、直近では1億円程度の黒字で、本業の黒字率にして約10%と好調です。
ただし、細かく見るとそう楽観もできません。

湘南鎌倉医療大学「事業活動収支計算書」より筆者作成

湘南鎌倉医療大学「事業活動収支計算書」より筆者作成

これは、本業に相当する教育活動収入の内訳です。約6億円の学納金の次に大きな収入が、寄付金です。通常、学納金が7~8割、補助金が1~2割といった構成になることが多いので、この寄付金の割合27%は、かなり大きいと言えます。

寄付金がどこからのものなのかは明記されていませんが、恐らくは大元の医療法人からのものが相当額を占めると推察できます(もちろん、個人や企業からの寄付もあるとは思いますが)。
先ほど見た通り、直近の黒字額は1億円程度であり、この寄付金3億円が無ければ、収支がバランスしない収益構造です。

このように、大元の医療法人に依存する医療系大学は珍しくありません。例えば、2020年度に学生募集停止をした保健医療経営大学は、大元の社会医療法人より、毎年2~3億円の寄付金を受領しながらも赤字を出していました。さらに13億円近い借入も医療法人から行っており、2019年には債務免除を受けています。
大元の医療法人からしたら、毎年寄付しても貸付しても回復の見込みがない大学に、これ以上投資できないという思いはあったでしょう。

話を湘南鎌倉医療大学に戻すと、やはり入学定員100人程度の小規模法人で利益を出すのは極めて難しいと思われます。徳洲会としては、新たな部門を設立することで収益の柱を多角化する狙いがあるのだと思うのですが、大きく定員割れした姫路獨協大学を建て直すのは並大抵のことではありません。

とはいえ、大元の徳洲会はかなり大きな医療法人。官報決算データベースによると、グループの直近売上高は6000億円超え、純利益は129億円にも及びます。
先ほど、姫路獨協大学の教育活動収入を15億円程度と推定しました。実際の金額は不明ではあるものの、似たような金額でしょう。
これを見ると、この姫路獨協大学の赤字なんて、徳洲会グループで見ればそれほど大きな額ではありません。この旺盛な資金力で、大学がどのように変化するのか注目しましょう。

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